幼い少女との政略結婚を機に少女愛に目覚めた、若き国王の性愛を描く

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王の少女愛

第一話:初夜 その1

「ルーク。起きて、ルーク」
 心地よい安眠を貪っていたルークは、遠くから呼びかける声と共に体を大きく揺さぶられ、重いまぶたをゆっくりと開く。目の前には、愛人のエリーゼの顔があった。
 二歳年下の幼なじみである彼女の見慣れた表情を見つめ、ルークは小さく寝返りを打って再び目を閉じる。だが、エリーゼが体を揺さぶって、再び眠りにつくのを遮った。
「だめよ。ルーク、起きて。侍従長がお目にかかりたいって」
 忠実な初老の侍従長の顔が思い出されて、ルークは睡魔を吹き飛ばすように大きな息を吐き出し、重々しく体を起こした。時計を見ると、まだ七時前だった。いつもならまだまどろんでいる時間だ。
「ほら、早く」
「わかったよ……」
 ルークは渋々とベッドから起き出した。朝日に照らされてルークの均整の取れた裸身が露になり、エリーゼはさりげなく視線を逸らす。ルークは裸で寝るのが趣味だ。
「こんな朝早くから、どんなご用かしらね?」
 エリーゼがクローゼットから衣服を揃えながら口を開く。
「決まってるよ。最近の侍従長は、結婚式のことで頭がいっぱいだ」
 目をこすってルークは皮肉を呟く。
 ファール王国の若き王であるルークは、政略結婚により、隣国チップ国の王女アマリエと結婚することが決まっている。父王の時代から王家に仕える忠実な侍従長は、来週に控えたルークの華燭の宴の準備に追われていた。
 結婚に関してルークは、はっきり言って気が進まなかった。十歳のときに初めて女を与えられて以来、たくさんの女性と関係してきた好色のルークは、たった一人の女性に縛り付けられてしまう結婚というものに全く興味がなかった。
 しかも、今年で十八歳になるルークに対して、新妻となるアマリエ王女は、なんとわずか十一歳である。
 血統を絶やさないために婚姻が必要だということは、ルークも承知の上だ。でも、たった十一歳の女の子とどんな新婚生活をしろと言うのだろう。
 だが、嫌々ながらもルークは結婚を承諾せざるを得なかった。今回の結婚は、昨年、両国が結んだ同盟の証として定められたものだからである。ルークだけでなく、おそらくアマリエにとっても決して望んだ結婚ではないだろうが、国のためにも二人は拒否できなかった。
「いよいよルークも所帯持ちというわけね」
「気が重いことだ」
 ルークは着替えを済まし、ゆっくりとエリーゼを振り返った。
「それより、エリーぜ。君は一応、僕の愛妾ということになっているからな。僕が結婚したら、君の立場は苦しいものになるかもしれないぞ。これから、君はどうする?」
 突き詰めるような質問にも、エリーゼは笑顔を絶やさない。
「お払い箱ということかしら?」
「まさか。僕には君が必要だ。でも、一番辛い思いをするのは君かもしれない。君の意見を尊重するよ。希望があるなら言ってくれ」
「なら、私は王宮に残るわ。こんな居心地のいいところはないもの。私にも、あなたが必要だしね」
 エリーゼの意味ありげな笑みに、ルークも笑みを漏らした。エリーゼはルークの愛人ということにはなっているが、実のところ、二人の間に肉体関係は全くなかった。エリーゼが同性愛者だからである。
 この国では、宗教的な理由で同性愛は忌み嫌われる。だがルークは、幼なじみのエリーゼが同性愛者だと知ったとき、あえて彼女を側近として引き入れた。そして、女官たちに精通しているエリーゼの人脈から愛人を献上させることを条件に、エリーゼの同性愛を認めたのである。
 この「契約」により、エリーゼはルークの庇護を受けて心置きなく同性愛に没頭し、ルークは彼女から紹介される美女たちを相手に淫行に耽ることができた。その擬態として、エリーゼをルークの愛人として周囲に認知させていたのである。二人の間には、単なる愛人などよりもよっぽど深い繋がりと信頼関係があった。
「でもね、ルーク。宮廷人たちの噂なんて聞き流していればいいけど、王妃になるアマリエ姫の非難だけは避けなければならないわ。私にとっても、あなたにとってもね」
「そうだな。君を今のまま、僕の側仕えにしていると誤解の元になるか。新婚早々、夫婦ゲンカというのも冴えないしな。新しい君の地位を、侍従長と一緒に考えてみることにしよう」
「できるだけ高い地位をお願いね」
「わかってるよ」
 エリーゼの率直な意見に、ルークは苦笑しながら部屋を出た。


 寝室を出て執務室にやって来たルークは、さっそく侍従長を呼び入れる。侍従長の用件は、案の定、来週の結婚式に関するもので、ルークが飽き飽きするほど長たらしい報告を述べた。
「……以上、ご報告させていただきます」
「ご苦労様」
 ようやく終わった長い報告に、ルークは多少の皮肉を込めながら慰労の言葉を掛けた。ルークは、大臣などよりもこの初老の侍従長に厚い信頼を寄せていたが、生真面目すぎるのが難点だった。
「侍従長。結婚式に関しては君に大変な苦労を強いているし、今の報告と準備も実によくできている。でも、こんな朝早くからやってくるほどのことでもないだろう」
 侍従長は丁重に一礼する。
「お休みのところを申し訳ありませんでした。実を言いますと、一つ陛下のお耳に入れたいことがございまして」
「なんだ?」
「エリーゼのことでございます」
 ルークは納得して頷いた。あまり他人の耳に入れたくなかったから、ご機嫌伺いの貴族たちさえもまだ参内していないこの時間に出向いてきたというわけだ。
 内心でルークはほくそえむ。ルークの一番の側近である侍従長でさえも、ルークの愛人がエリーゼであることを信じて疑わない。ルークとエリーゼが共謀しての情報操作は完璧だった。
「君の言いたいことはわかるぞ。アマリエ姫との結婚を控えているのだから、愛人エリーゼとの仲を清算しろと言うんだろう」
「さようです。王妃となられるアマリエ様はまだ十一歳と幼くいらっしゃるゆえ、チップ家も、まだお若いルーク陛下の不倫もある程度までは黙認するご意向です。ですが、公然たる愛人の存在は、チップ家とアマリエ様の尊厳に傷をつけることになりかねず、絶対に認められないとおっしゃっております」
「なるほど。もっともだな」
 誰だって、寝取られ者などと陰口を叩かれたら気分が悪いに決まっている。
「その件に関しては、僕もエリーゼと話し合ってみたんだ。彼女は、王宮を去るつもりはないが、関係を清算して僕の側から離れることには同意してくれた。彼女を僕の側仕えから離して、別の地位につけてやりたい。何かいい案はないか?」
 侍従長は黙って頷く。どうやら、あらかじめ策を練っていたようだった。
「女官長の補佐役はいかがでしょう」
「女官長の補佐?エリーゼはまだ十六だぞ。若すぎないか?」
「いえ。アマリエ様のご来臨にあたって、王宮では若い女官と小間使いを増員しております。そういった年少の者たちのまとめ役に、エリーゼは適役ではないでしょうか」
「なるほど。エリーゼは子どもの頃から宮廷に仕えていたから、宮廷内のことは知り尽くしている。後見の側に回ってもいい頃かもしれないな」
 多くの若い女官たちと接する機会が得られれば、同性愛者のエリーゼは喜ぶだろうし、ルークの密かな愛人探しにも好都合だ。
 チップ家がルークの不倫を黙認してくれたのは幸いだった。これまで通りの愛欲生活が維持できるのなら、喜んで結婚してやろうというものだ。
「よし。エリーゼを女官長補佐に任じて彼女との仲を清算し、気持ち良く結婚式に臨むとしよう」
 ルークは早速、エリーゼを女官長の補佐に任じることを発表して彼女との関係を清算することを遠回しに宮廷に知らしめると、翌週、結婚式のために王宮を出立した。結婚式は、国境近くの街で盛大に行われる予定になっていた。


「ご立派ですぞ、陛下」
 結婚式当日。侍従長が、正装に身を包んだルークをまぶしげに見つめる。
「亡き先王陛下もお喜びのことでしょう」
「大袈裟だよ」
 ルークは苦笑しながら肩をすくめた。
 娘の結婚式だとでも言うなら父親として思うこともあるだろうが、放蕩息子の結婚式などに父王にどれほど情があるというのか。
 今回の結婚式にさまざまな思いを抱いているのはチップ王家の方だろう、とルークは思う。先日会ったチップ王は、娘を一国の王に嫁がせるという名誉と、まだ幼い娘を手放してしまう悲しみを抱えて、感情を持て余しているようだった。
 そして、アマリエ。つい先日、初めて会ったばかりの小柄な少女が、どうしようもない不安に苛まれているのがルークにも見て取れた。望まない結婚に臨むのはお互い様だが、自分の知らないところで婚姻を決められた彼女にはいささか同情の余地もあり、不安を抱えたその姿はとても痛々しかった。
「侍従長」
「なんでございましょう」
「アマリエ姫のところに行ってくる。時間になったら呼んでくれ」
 いてもたってもいられずに部屋を出たルークは、任務とはいえ同行しようとする無粋な親衛隊を追い払い、一人で花嫁の控えの間にやってきた。
「失礼するよ」
 ルークが部屋に入ると、着替えを済ませたアマリエと、彼女について母国からやってきた乳母が驚いて椅子から腰を上げた。
「まあ、陛下」
 先に声をあげたのは乳母だった。
「いくら陛下とはいえ、式前に花嫁の部屋に足をお運びになるのはいかがなものかと」
「ん。あ、ああ……」
 思いがけない攻撃にルークが一瞬たじろぐと、アマリエが乳母の腕をつかんで引きとめた。乳母は渋々といった感じで一礼してルークの前から下がり、少しは気を遣ったのか静かに部屋を出ていった。
 ルークはその後姿を見送り、思わず苦笑をもらす。確かに乳母の言うとおりで、突然に式前の花嫁を訪れるというのは気の利かない所業だったかもしれない。もっとも、こうまではっきり言われると怒る気にもなれない。
「突然で悪かったね。君に会いたいと思ってね」
 アマリエはルークの前にやってきて、挨拶と謝罪を兼ねて、スカートをつまみ腰を屈めて深く会釈をする。
 純白のドレスに身を包んだ彼女は、口紅を薄く塗った以外には化粧をせず、頬紅すら差していなかった。でも、それでいいとルークは思う。初々しい白い肌を、化粧でわざわざ隠す必要は無い。
 アマリエは癖の無い美しい黒髪と、すけるような白い肌、大きな瞳の愛らしい表情を持ち、まさに将来の美貌が約束されていると言えた。文句のない美少女ではあるが、背丈はルークの胸までしかなく、女性というより少女、少女というより幼女に近かった。
 それでもルークは、礼儀を込めて彼女の前に跪き、彼女の手の甲に唇を押し当てる。女性であれば、年齢や身分に関わらず礼を尽くすのがルークの主義だ。
「きれいだよ、アマリエ」
「光栄で、ございます、陛下」
 たどたどしい敬語で答えるアマリエの瞳に、不安の色が揺れる。結婚式には両親も当然ながら同席しているが、この式が終われば両親は国に帰り、アマリエは乳母だけを共にこの国に残り、つい先日、初めて顔を合わせたばかりの男の元に嫁がなければならない。両親と離れて暮らすのはとても悲しかったし、初めての国で暮らすこれからの生活への不安は、まだ十一歳の少女には隠しようも無かった。言葉が通じるのがせめてもの幸いだったが、それも気休め程度にしかならない。
 そんな彼女に気づき、ルークは跪いたまま視線を彼女と近い高さに置いて優しい笑みを浮かべる。多くの女性を虜にしてきたルークの笑みは、幼い少女にも多少は通用するはずだ。
「アマリエ。君と僕はこれから夫婦になるんだから、無理して言葉を飾る必要はないよ。陛下っていう呼び方も堅苦しいから、これからはルークって呼んでくれ」
 思いがけない気さくな言葉にアマリエは驚き、そして頬をほころばせた。
「はい、ルーク様」
 頬を染めて頷くアマリエを、ルークは微笑ましく見つめる。
 そのとき、ドアがノックされて外から声が響いた。
「陛下。式の準備が出来ました」
「わかった」
 ルークは答えて立ち上がり、アマリエを振りかえる。
「行こうか、アマリエ」
「はい、ルーク様」
 ルークはアマリエの手を取り、会場へと向かった。
 王家同士の結婚式は盛大に行われた。神の前で永遠の伴侶を誓ったルークは、ついにアマリエと誓いのキスを交わす。身長差があるためルークは跪き、彼女を抱き寄せるようにして唇を重ねた。この瞬間、二人は夫婦となったのである。
 一週間にも及ぶ長い祝賀の宴が終わった後、ルークとアマリエは国内を一周するハネムーンに出かけた。一週間の、夫婦水入らずの旅行だ。二人の親睦を深めるというだけでなく、アマリエに初めてのこの国を案内する意味もあった。
 そして、離宮で初夜を迎えた。

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